WORK
満たす×しごと

Project Story #03地球にやさしい
アメニティ

プラスチックを55t、70%削減!
ホテルならではのSDGs貢献。

Mission

2019年、東急ホテルズ&リゾーツは、国連の定めた持続可能な開発目標「SDGs17ゴール」に貢献するべく自社のサステナブル方針を制定。“地球にやさしいホテル・まちにやさしいホテル・ひとにやさしいホテル”を掲げ、具体的なアクションプランの実行に取り組んできました。国内有数のホテルチェーンだからこそ、できることがある。その活動の軸となったのは、ホテル業で欠かせない素材「プラスチック」の削減でした。

Member

運営統括
運営企画
部長
M.KANEKO
運営統括
運営企画
企画
チーフ
K.EHARA
運営統括
運営企画
企画
チーフ
R.HOSHINO

“環境先進ホテル”であり続ける姿勢

東急ホテルズ&リゾーツは、社会や業界に先駆けて、環境保全活動に関心を寄せてきました。たとえば、2001年には歯ブラシやカミソリなど、未使用アメニティの金額相当分を、アジア太平洋地域を中心に展開する「子供の森」計画に役立てる「グリーンコイン制度」を実施。また、2008年からは山梨県北都留郡丹波山村での森づくりや、アソシエイツ(従業員)によるボランティア活動にも精力的に取り組んでいます。そうした背景もあり、2019年にはいち早く「サステナブル方針」を制定。プロジェクトチームを立ち上げ、議論を重ねた末、環境にやさしいアメニティの導入を推進することになりました。

「全国に展開するホテルチェーンだからこそ、使い捨てアメニティの素材を見直すことが大きなインパクトになると考えました」

社会的意義を見据え、2021年より取り組みを本格化。アソシエイツへの周知に時間を要したものの、2022年の「プラスチック資源循環法」施行など社会の変化が追い風に。

「今は半期に一度、ホテルのSDGs担当を集めて講習会や意見交換会を行い、社内意識の醸成に取り組んでいます。また、お客さまに対してはリリース配信などを通じて、取り組みの意義を発信しています。おかげさまで社内外でかなり理解が深まってきた印象です」

と、チームは数年がかりで進めてきたプロジェクトの手応えを話します。

妥協なき検証が生んだ、日本初のエコ歯ブラシ

無数にあるアメニティの中で、まず見直したのはプラスチック製の歯ブラシでした。お客さまが口に入れて使うツールだからこそ、安全性への配慮という観点でシビアな素材選びが求められます。

「木製、竹製などの素材も候補にあがりましたが、使い心地や形状に違和感を覚えました。また、ささくれでお客さまが怪我をする可能性も考慮しました。私たちがまず考えるべきはお客さまの安全・安心。チームはもちろん、社内の他部署にも意見を聞いて、最適な解決策を何度も話し合いました」

品質と安全性を徹底的に検証し、たどり着いた新素材が「カネカ生分解性バイオポリマー Green Planet®」。100%バイオマス由来で、土や海水中でも分解される地球にやさしい素材です。

「歯ブラシとしての使用は日本初です。約一年をかけ、幾度もの試作と改良の末にようやく完成しました」

その使い心地は従来のプラスチック製品に劣らず、社内やお客さまからも好評を得ました。あわせて、歯ブラシの包材もビニール製から紙製へ変更。運搬中に包材がよれてしまわないよう、紙の材質も試作を繰り返し、エコの取り組みと見栄えを両立。包材には、素材の説明を記載し、新たな取り組みをアピール。お客さまからも支持を得ることができました。

「しっかりと取り組みの意義を伝えていくことが大切だと学びました」

と言うように、地球環境や社会問題への真摯な関わりで理解者を増やしていきました。

お客さまの満足度と、環境配慮への葛藤

アメニティ類の改革と同時期に始動したのが、ペットボトル飲料の見直しです。2021年に東急REIホテルブランドではこれまで客室で提供していたペットボトル入りミネラルウォーターを廃止し、各フロアにウォーターサーバーを設置。水を入れるカップにもこだわり、木材由来原料の「森のタンブラー(アサヒユウアス株式会社製)」を採用しました。さらに2022年には、東急ホテル、エクセルホテル東急にもペットボトル削減の取り組みを拡大。ウォーターサーバー以外にもアルミ缶や紙パック入りミネラルウォーターの採用を行い、全店舗で約320万本(2019年度比)ものペットボトル廃棄削減を達成。ただし、大きな成果を上げた一方で、環境配慮への難しさを実感させられたとメンバーは話します。

「アルミ缶や紙パックのお水などさまざまな製品を検証したのですが、運搬過程で形が潰れてしまったり水に紙の匂いがついてしまうなど、製品選びには苦慮しました」

お客さまの体験価値とサステナブルな理念は、時としてぶつかり合うこともあります。その葛藤の中で、少しでも良い解決策をいかに生み出すかが腕の見せどころです。チームはプラスチックの有効な使い方も含めて、“適材適所”を進めています。

「使い心地や安全性、コストなど総合的に考えるとプラスチックはやはり便利な素材です。やみくもに変えるのではなく、使い捨てとなってしまっているプラスチック製品から削減をしていくことがお客さまと環境双方に配慮できる在り方だと感じました」

こうしてさまざまな学びを得ながら、少しずつ、しかし着実にプロジェクトは成果を上げていきます。

終わることなき、SDGsへの追求

議論と検証を徹底的に行い、使い心地と利便性、環境配慮を適切なバランスで兼備させる。そのたゆまぬ努力は実り、2022年にはプラスチックの約70%以上削減(2019年比)を達成しました。しかし、それでもまだ改善の余地は多くあると、チームは話します。

「アメニティを廃棄するのではなく、アップサイクルやリサイクルなどに活用し、循環させる仕組みをつくりたいんです。そんな想いから、一部のホテルで実験的に使用済みの歯ブラシやヘアブラシを、コースターや靴べらに変えて利用するという試みを始めています」

また、環境だけに留まらず、“ひとにやさしいホテル”の実現も目指しています。

「2024年に『障害者差別解消法』が施行されます。ユニバーサルルーム、手すりやスロープ、介護用品などを備えていないホテルも多いので、ハンディキャップを持たれている方にも安心してご利用いただけるように、時代に応じたアップデートをどんどん進めていきたいですね」

衣食住を提供するホテル業は、SDGs17ゴールのすべてに貢献することのできる数少ない仕事です。だからこそ、できることは広くやりがいは深い。プロジェクトチームは、これからも東急ホテルズ&リゾーツのSDGsを推進していきます。